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★『祭り』『空』「夏影」「海」『メロンパン』『爆弾』を全部使って、テーマ「花火」で。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 祭りの気配は、砂浜まで漂ってきていた。
 空はとっくに夜の色で、目の前に広がる海は暗い。
 『夏影』を聴きながら歩いていて、僕は彼女を見つけた。
 見つけたのは、偶然じゃない。正確には、探していたんだ。
 彼女は、浴衣姿で浜辺にひとり座っていた。
 そっと近寄った僕は、右膝でトンッと彼女の背中をつついた。
「なっ……何だ、びっくりするじゃないの」
 驚いた顔で振り返った彼女の手には、見なれたパン屋の紙袋が握られている。
「何それ?」
 祭りにはテキ屋が出ていて、食べ物を売る夜店もあるのに。
 そう思うと、ちょっとおかしくて、僕の声は揶揄を滲ませていた。
「アンタには関係ないでしょ」
 少し声を尖らせて、彼女が中腰になった僕の耳からイヤホンを奪う。
 ぶらんと首から垂れ下ったイヤホンを指先で弄っている僕と、浴衣姿で座っている彼女。
 祭囃子はこの砂浜まで聞こえてくるけれど、今ここには、ふたりの他には誰もいない。
「どうせ、いつものメロンパンだろ」
「知ってるなら聞かないでよ」
 そう言って、彼女はぷいっと明後日の方向に顔を背けた。
 ほんのりと膨らんだ頬が可愛くて、僕は「さあ、どうかな?」なんて言ってみる。
「もしかしたら、中身は爆弾かもしれないじゃん」
「バカなこと言わないでよ。買ったのは私なんだから、中身くらい知ってるわよ」
 あきれたような声に、ひそやかな笑いが混ざっている。
 暗くて表情がよく見えないことを残念に思いながら、僕は彼女の隣、特等席に腰を降ろした。
 ここから眺める花火が、一番美しい。
 それは、毎年思うことで……。
 僕にとって、いつも間違いのない真実だった。


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